あなたの街の都市伝鬼! (電撃文庫) [感想]
第18回電撃小説大賞 金賞受賞作
多くの都市伝説を調べている八坂出雲が、今度調査するのは「ムラサキカガミ」と呼ばれる都市伝説。出雲が誕生日を迎えた日に鏡を見ると、その都市伝説と同じ現象が発生し、目の前に本物の「ムラサキカガミ」が現れて――出雲は彼女たち都市伝鬼を一冊の本に編纂することに。
温かく柔らかい都市伝説の数々。
本作を説明するときに、最も分かりやすい例えは「ほうかご百物語」のような話、だろうか。登場する都市伝鬼たちは、本来なら怪談なので怖いはずだけれども、怖いというより可愛らしい。人を殺すような強い力を持った都市伝鬼がいないので、読んでいて和む。
金賞受賞作ではあるけれど、物語の安定感や方向性などを考えると、本作が大賞でも疑問は抱かなかったかもしれません。
しかし、あとがきは見事でした。まさにその通りといいますか。コミカルにしているので笑えて和むけれど、これを本気で怪談にされてしまうとまるで笑えない、怖いのだ。けれども、ホラーの受け取り方を少し変えてあげると、何とも可愛らしく温かい。
都市伝鬼の編纂者であるところの出雲が、ヒロインたちの言動にツッコミを入れるテンポ感は気持ちよかったですし、怖い都市伝鬼なはずなのに驚かされたりしても怒らずに笑って許してしまえるのは凄い。全てを受け入れる出雲には終始好印象で、彼がいるから物語が温かいのだと思わされた。
面白かった。
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- 作者: 聴猫芝居,うらび
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 文庫
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