楽園島からの脱出 (電撃文庫) [感想]
土橋真二郎さんの新作。
無人島で開催される脱出ゲーム。高校生男女合わせて100名が参加するゲームをクリアするには、無人島から脱出すること。最低限のゲームルールしか説明されない中、脱出を目指してゲームの謎とルールを解明していく――。
高校生という枠組み。
今回ゲームをすることになる登場人物たちだけれど、誰もが冷静で大人である印象を受けた。元々学校で開催されていた極限ゲームに触れていたから、というのもあるのかもしれないが、全員があくまでゲームとして進めていますし感情で物事を整理しないように論理的な思考で動いている。なので現状、まだゲームは破綻していない。
特に気になったのは、高校生という枠組みを崩さないように協調しあっているという点。これまでの作品のように露骨な対立は少ないですし、出し抜いてやろうとする思考や悪意が少ない。もちろん争いがないわけではないのだが、争うにしても事後処理が冷静だ。それは争いの元凶になった人間の台詞からも読み取れる。
けれど、これからは分からない。
最終的に主人公の沖田がゲームという枠から逸脱した行動をとってしまうので、ここからゲームが破綻してしまう可能性があるし、高校生ではなく人間としての感情をむき出しにする100人の姿が描かれていくのかもしれない。著者の持ち味は、人間の持っている裏側や心理を晒し者にする描写だと感じているので、そこは楽しみではある。逆に、沖田にはゲームとして脱出ゲームを終わらせて欲しいという気持ちもあったりして、複雑だ。
人間の醜悪さ、歪んだ黒い感情に支配されていく過程、本性に任せた行動の先は描かれていくのか。ゲームが進むごとに変化していった男女ペアの価値が、どのような意味を持っているのか、加えてまだまだ解明されていない謎が多いのでどのような展開を見せてくれるのか。
その他、恋愛ゲームの様だと発言した人がいたけれど、ゲームを抜きにしたらまた別の楽しさが見えてくるのは相変わらず上手い。何気にゲームの重要ポイントかもしれません。女の子たちが純粋なエロさを持っているのも魅力なのですよね。
面白かった。続きも読みたい。
Presented by Minai.

- 作者: 土橋真二郎,ふゆの春秋
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2012/05/10
- メディア: 文庫
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