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放課後のフェアリーテイル ぼくと自転車の魔法使い (電撃文庫) [感想]

放課後のフェアリーテイル ぼくと自転車の魔法使い (電撃文庫)

 

杉原智則さんの新作。「烙印の紋章」は本当に傑作だったので、こうやって新作を発表してくれるのが嬉しいですね。タイトルからして殺伐とした物語でないと予想していましたが、読んでみた感想は「猫泥棒と木曜日のキッチン」とか「サイハテの救世主」っぽいな、でしょうか。空想の世界はあるのかないのか。ないのだろうけれど分からない展開にドギマギさせられて、でもやっぱりなくて。最終的に空想に入り込んでしまう理由というか、物語の確信に迫ってくる構成の物語。

 

だから、烙印の紋章」で感じたような面白さとはちょっと違う。確かに内容は退屈でまるで児童文学を読んでいるような雰囲気を感じる。ライトノベルですよと言われると、ちょっと違うのではないだろうかとも思う。

 

美しくも儚い空想世界はお姉さんの危機を伝える神永くんの心そのものだったのかもしれませんね。姉弟の悲しいけれど強い絆に導かれるようにマ・ウアー=コギトを冒険することになった主人公だけれど、途中で世界の存在意義には気づいていたはずだろうと思う。明確に分かっていたわけではなく漠然と察していて、けれど世界を冒険しているお姉さんの秘密を探るという理由をつけて忘れているようにみせていただけなのかなとか。もしかすると神永くんの存在を誰よりも信じていたのが主人公なのかもしれません。鈴木さんやお姉さんも現実から空想世界に逃げ込もうとしたけれど、主人公も逃げた一人には違いなくそれでも改めて向き合おうを決めたのだとすれば、話の読み方も変わってくるのかな。

 

ですが、正直なところ戦記モノが読みたかったのが本音です。本作の登場人物たちの年齢設定が中学生というのも、ライトノベルでも最近だと珍しいのではないでしょうか。