氷の国のアマリリス (電撃文庫) [感想]
悲しいけれど、悲劇じゃない。
読んだ後に心が温かくなりますし、充実した気持ちになる。……そして、登場人物たちにありがとうと言いたくなる。人間をここまで想ってくれてありがとうと。プログラムで動いているのかもしれないけれど、確かに感情があって考えて悩む姿は人間そのもの。
みんな良い奴ばかりで、悪人がいない。本当に良い人、もとい良いロボットばかり。過酷な環境なのに自分たちよりもご主人様の人間を優先するので、そこまでしなくてもいいから自分を大切にしてよと思う。健気な姿が愛らしく愛おしい。
ご主人様が目覚めることを祈る祭りを恒例行事としてやってしまうくらい人間のことが大好きなロボットたちなので、頭が下がります。だから、ありがとうなのです。
『半分こ』にしなさい。
物語には貫き通したテーマがあって、完成度も高い。SFだけれど家族モノとしても読めるのではないかしら。中盤以降に数々起こるアクシデントを乗り越えていくのは、強いなと思う反面、頑張ってるのに与えられる状況が辛過ぎる。ここまでやっているのだから、報われて欲しいと自然と読む手に力が入ります。
また、忘れた頃にしっかりと舞台装置を回収していく辺りは流石ですし、SF要素を入れ込みつつ世界観をコンパクトにまとめきっているのも素敵だ。面白かった。
アマリリスが幸せに暮らせることを祈っています。
Presented by Minai.
- 作者: 松山剛,パセリ
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2013/04/10
- メディア: 文庫
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