Infinity recollection

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烙印の紋章 11 あかつきの空を竜は翔ける (上) (電撃文庫) [感想]

烙印の紋章 11 あかつきの空を竜は翔ける 上 (電撃文庫 す 3-25)

 

戦があるわけじゃない。最後の決戦に向けての前準備であり、政治的な駆け引きはあれど序章であり派手さがあるわけではない。けれど、最終巻の上巻として素晴らしい出来だった。

 

何より感慨深いのは、ギルとグールが面と向って己が矜持を示し、思いの丈をぶつけ合ったということ。お互いに孤高であり続け、孤独であるべきだった二人だからこそ真っ向から語り合う必要があったように思うし、そこにはメフィウスの玉座を賭けた、命を賭けた舌戦だけではなかったように映った。

 

グールは今回のことでギルを後継者として認めたように見えたし、ギルにしてもただ自分の正体がバレるのを恐れたから王宮に赴いたわけではない。正直、ギルはあの場に立ったときから、皇太子である前に一人の人間であり、父と子であったように映った。だからこそ、グールの言葉に頬から伝うものがあったのだろう。

 

その場にオルバという人間はいなかった。グールに怒り、国を憂い、未来を見ていたのはギル・メフィウスという人間で、本気で誰かを想うことと国を守ろうとする姿があった。立ち姿、一挙手一投足に至るまで鳥肌が立ったし、格好良かった。

 

正直、この巻ではギルの見せ場が多いわけではないし、視点が切り替わることも多い。でも、強烈に印象に残ったのは彼なのだ。そういう意味でも、やはりギルの物語。

 

これから軍を再編成し、自分に仕えた将校と交わす言葉とやり取りも彼らしく格好良い。ランが面倒を見てきた竜に名前をつけるのがここまでワクワクすることなのか。クライマックスまで来たのだという高揚感が終始消えなかった。

 

ビリーナとギルの結末がどうなるのか、国の威信と未来をかけた戦いが始まろうとしている。終わるのが勿体無い。続けて欲しいけれど、終りがどうなるのかも見てみたい。二律背反を抱えたまま最終巻を待つことになりそうだ。

 

面白かった。

 

 Presented by Minai.