空戦魔導士候補生の教官1 (富士見ファンタジア文庫) [感想]
第24回後期ファンタジア大賞 金賞受賞作
これはよく出来ている。作品として何をやりたいのか、どこを面白さとして提供していくのかが明確なので、読んでいて構成が綺麗。先が読めると言えばそうだけれど、期待されるエンタメを期待通りに読ませてくれるのが気持ちが良い。
主人公の性質も無理がなくて好感が持てた。この手のやる気がなく、実は強い系の主人公というのは、自分勝手に映ってしまいがちで好きになれないことが多いのだけれど、その辺り人に気遣ったり何だかんだでお節介なカナタはしっかり感情が見えてくる主人公でバランスが取れている。
はっきり言うと文章としての完成度はそこまでではない。
地の文での説明にしろ、カナタのつっけんどんな態度、ヒロインたちの台詞など、調整が曖昧で、良い部分と悪い部分の差が激しい。視点を主人公と女の子たちに固定しているからこそ、無駄な情報がなく成り立っているが、この周囲まで描いてしまうと物語が瓦解するのではないかという不安要素がある。
しかしながら、ジャイアントキリングをする最弱部隊と、その育成をする元エース魔導士という設定は凄く好みですし、淡々と描いていくところは映像向きで、容易に想像できるのが魅力だろう。
この作品の凄いところは、誰が読んでも類似作品の一つや二つ思い当たるので、文字で説明せずとも読んでいる側が勝手に想像してしまう部分が少なからずあるところではないのかと思っています。
Presented by Minai.
- 作者: 諸星悠,甘味みきひろ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2013/07/20
- メディア: 文庫
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