Infinity recollection

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バベロニカ・トライアル 西春日学派の黄昏 (電撃文庫) [感想]

バベロニカ・トライアル 西春日学派の黄昏 (電撃文庫)

 

表紙買いです。あらすじもSF調で興味を惹かれましたし、ふゆの春秋さんがイラストを担当されているとなったら、購入のハードルはかなり下がりますね。透き通るように綺麗な女の子です。それでも書店での実物が案外ボリューミーで、その文庫の厚みに一瞬たじろぎましたが、買いました。

 

読みました。SFかと思ったら学園ものっぽくなり、グダグダやってるうちに本筋に入ったらしく、青春なのかしら?と疑問符浮かべて気づいたら終わってました。終始、ふーんという感じでしょうか。数学的難問に主人公たちが挑んでいるのはSFらしいのだけれど、その解答方法が超科学的パワーゲーム(レース方式)で行っているという説明の部分で大量の?????疑問符が。あれ、これって電撃文庫だよね、レーベル間違いってことはないよねと思ってしまいました。

 

正直、ラスト数十ページが本質で、回送電車でヒロインと主人公が別れていく場面の美しさがやりたかったのかなと。そこに向かって描いていくのはいいのだが、如何せん理解が追いつかない。過去編は別として、序盤からの150ページほどは必要には思えず、学園の部分はただただ登場人物が増えているだけで展開をややこしくしているだけに見えましたし、その登場人物たちもラストには必要ではないので、一体全体何故登場したのかと。学園らしさや青春らしさの演出をするにしても、ヒロインと主人公だけいればいいように思えました。

 

また、案内役となる人物がいないので、展開が投げっぱなしにも映りました。主人公は全て分かっている役どころなのだけれど、各種設定が彼の口から説明される割には読み手にまで伝わってこない。ヒロインは確信なのでやっぱり全部知っているが説明はしない。地の文も台詞回しも特殊で、20人ほどいるのではないかと思われる登場人物たちは、名前が特殊で覚えられない。ライトノベルらしさは時に諸刃の剣で、これなら極論として鈴木太郎とかの方が物語に集中できる。

 

特に難解だったのは、背景や風景が見えてこないところだろうか。西尾維新さんの作品でもそうだが、会話劇で風景描写はない。この作品は会話劇というわけではないのだけれど、風景描写というか背景やら場所が曖昧で、説明してくれているにはいるが、表現方法がシンプルではないから難解としかいえない。途中からはそれが面白くもなる。自分はサイケデリックな風景を想像しながら読みましたよ。緑の空にオレンジの高層ビル、アニメ調の雲。ここまで来ると背景ないほうが良いかもと思ったり。

 

とりあえず、設定資料集と用語資料を読んでからでないと、理解するのは難しそうな作品という印象でした。ただ、読めるには読める。そこを上手さと捉えるかどうかは読み手しだいでしょう。