Infinity recollection

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シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精 (角川ビーンズ文庫) [感想]

シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精 (角川ビーンズ文庫)

 

 ファンタジーな恋物語

 

 人間が妖精を使役するのが当たり前のハイランド王国。この国には、砂糖菓子を作る特別職があるのだけれど、その中でも王家勲章を持つ者は銀砂糖師と名乗ることができる。

 

 主人公アンの母親はまさにその銀砂糖師だったのだが、その母親を亡くしてしまう。この母の死をきっかけに、アンは銀砂糖師になることを決意し、旅に出るのだが――。

 

 妖精の美男子と人間の少女との、変な関係が楽しめた。

 

 シャルは妖精であり、アンに旅の道中の護衛を頼まれた間柄。加えて、妖精にとって大切である自らの羽を握られている。人間でいうところの命を握られている。

 

 一見して主従関係ははっきりしているのだけれど、アンには妖精を使役する気がないので、命令ではなくお願いになり、どうにも関係がかみ合わない。彼は命令して脅せばいいというが、彼女はそんなことは出来ないという。シャルにとって命令しない人間などは珍妙に映り、けれどアンにとってはそれが普通。

 

 そんな奇妙な二人の関係性が面白かった。

 

 ファンタジーはファンタジーだけれども、そこに入り込んでくる要素としてラブコメというよりは、本当に恋物語で、徐々にキャラクターが恋していく雰囲気は好きになれた。また、恋物語に近いところで一種、児童文学然、童話然とした雰囲気があるのも魅力だ。

 

 登場人物では妖精のシャルがやはり格好良かった。ぶっきらぼうだけれど、やるときはやるし、物語が進むと優しさが垣間見えるのも王道だ。他にも妖精では手のひらサイズのミスリルがいたり、楽しい。

 

 世界観と設定のかみ合わせも良くて、旅、銀砂糖というワードでそれぞれ物語を面白くしてくれている。終始、王道に忠実で、やることはやっている印象。それが悪い部分とも取れるけれど、自分は楽しめたし魅力的に映った。

 

 面白かった。

 

 Presented by Minai.