星界の戦旗〈1〉―絆のかたち (ハヤカワ文庫JA) [感想]
人類統合体との戦争が始まるまでを描いた前作から、実際に戦争が始まり、大規模作戦が展開されている今回。突撃艦バースロイルを指揮するラフィールとジントを描く。
二人の関係性がやはり魅力。
戦場で戦っているのだけれど、そこはSFの艦隊戦なので直接的な死は見えない。その一方で、一撃で撃沈するという漠然とした恐怖がある。そこで見せたジントの行動が印象的でした。
ただそっと、ラフィールの傍らに立つ。
ラフィールは艦長なので、戦闘時にはもちろん緊張しているし、誰もがそうだ。そんな中、ジントは艦が被弾してからでないとやることがないので、艦橋の中でも特殊な立ち位置を持っている。
ジントが働く時は撃沈される時と同義なので、真の意味でジントには役割が無いに等しいのだけれど、ラフィールの側にいるという役割を与えられているのが憎い演出だ。
他にも、軍人として階級で呼び合おうと決めていた二人だが、周りはラフィールとジントが親しい仲であると勘付いていたり。意識しないところで自然と呼び合う関係になっていることが窺えて。
ラフィールとジントの距離感が心地いい。
また、ディアーホが良い動きをしていた。猫の視点で物語を読んでみるというのも新鮮で、戦場にいながらも猫にとってはどこも日常でしかないので、読んでいてその差に和んだ。
登場人物も多く、視点が細かく切り替わるのだが、それが物語の規模を大きくしている様に映り良かった。立ち位置の違うキャラクターを描いていくことで全体が補完されるし、そこにはそれぞれの関係性がある。
面白かった。
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