はたらく魔王さま!〈3〉 (電撃文庫) [感想]
魔王と勇者が育児に奔走。
すっかり日本の生活に慣れてしまった魔王さまは、日夜ファーストフード店でアルバイトに励むのだけれども、そこに異世界から赤ちゃんがやってくるから大変。アラス・ラムスと名乗る赤ちゃんに四苦八苦する真奥。しかも、真奥のことはパパと、恵美のことはママと勘違いしていて――。
これまでも生活感あふれる魔王と勇者の物語だったが、今回は更に顕著。
日本のお盆を知らない鈴乃に、真奥が解説する件からして馴染み過ぎなことは伝わってくるし、教えられたお盆をハードな解釈で実行しようとする鈴乃には笑わせてもらった。掴みがバッチリ決まったところで、アラス・ラムスが異世界からやってきて育児が始まるのだ。
最初は戸惑っていた魔王城の住人たち含め、恵美に鈴乃までもが徐々にアラス・ラムスに情をうつしていく姿は印象的だった。この後、夜鳴きに悩まされたり遊園地に連れて行ったりと、幸せな日常が描かれたところで、丁度良くガブリエルが悪役としてやってくるので気持ちよく読める。
真奥が魔王になった経緯とは――。
大切なモノを失うということを改めて感じた真奥の心境の変化と、そんな真奥を倒すためだけに生きてきた恵美の考え方を変える分岐点になっているのも特徴的。また、これが一番凄くて面白いと思ったのだけれども、話の展開のさせ方がとても綺麗。
アルバイトをしている描写を減らして、アラス・ラムスを主軸に構成された物語は抜群の安定感ですし、登場人物たちの役割が出来上がっているところで、育児という新しい要素を入れて、物語の根幹に関わってくる真奥の過去やらを小出しにする。
読んでいて退屈しない。
特に真奥がどうして魔王になったのかや、悪魔という種族の文化や生活体系が非常に気になる。続きが出るのが待ち遠しいです。面白かった。
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- 作者: 和ヶ原聡司,029
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/10/08
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