六花の勇者 2 (集英社スーパーダッシュ文庫) [感想]

七人目の勇者は誰だ。

始まり方からして鮮烈。七人目の勇者の正体を暴いたと思ったら、更に七人目がやってきて振り出しに戻された前巻からどう展開していくのか興味がありました。それが冒頭からクライマックス。趣向を変えて、既に誰が七人目なのか分かっている状況から物語が始まります。

冒頭部分に至るまでの詳細が語られていくのですが、これがまたスリルがあって面白い。

というのも、今回は疑心暗鬼になって緊張が続くというよりも、どうしてなのだと純粋な疑問と好奇心が先行します。また、敵方の三大将の内の一人、テグネウが黒幕であることが分かるので、勇者たちが向いている方向が定まります。

全員がテグネウという明確で分かりやすい敵を倒すために行動している。それは読み手としても分かりやすいですし、前巻の底の見えない沼や、真っ暗闇で孤高に戦う印象とはまた違ったものを読ませてくれる。

凶魔の統率者。

テグネウは知略に長けていることもあり、行動の意図が見えてこない気持ち悪さがあります。テグネウはAと言うが、Bの可能性もあるし本当にAなのかもしれない。そのふざけた態度が、焦燥感を煽る煽る。この気持ち悪さに絡め取られるように、疑心暗鬼から全力で戦うことができない勇者たちがもどかしい。

唯一、勇者であると判明しているアドレットを中心に立ち回るけれども、上手くはいかない。ましてや、テグネウの違和感に気付いたアドレットが、テグネウの秘密を探るのだが、これがまた逐次として進まないものだから、ここまで計算されているのではなかと不安になってくる。

――そして冒頭への回帰と、まさかの逆転の一手。

アドレットの謎解きと合わせて驚かされるとともに、二つの出来事がかみ合うことで爽快感が生まれた。ミステリ要素とファンタジー要素をバランスよく読ませてくれるのは流石でした。また、感情をぶつけ合う人間模様にもご注目あれ。フレミーがめっちゃ可愛いです。

面白かった。

Presented by Minai.

Infinity recollection