Infinity recollection

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塔京ソウルウィザーズ (電撃文庫) [感想]

塔京ソウルウィザーズ (電撃文庫)

 

第19回電撃小説大賞 銀賞受賞作

 

これは、凄いのが出てきた。正直、どう感想にしようか迷いました。というのも、とにかく説明が多い作品だからです。実に作品の半分は世界観と独自設定を説明するのに使われているのではないかと思わせるほどに説明だらけなのですから、これには賛否両論あるでしょう。

 

登場人物たち、主に主人公である黒乃一将の口から、読み手の立ち位置にいる真央へ魔術やら塔京やらの姿が語られるわけだけれど、これはもっと少なく出来なかったものかと……。世界観や設定は魅力的ですし、作品が持っているどこか落ち着けない背中を何かが這うような雰囲気にも好感が持てただけに、残念なところだ。

 

世界観を深く見せることは大切だと思いますし、事実惹かれました。けれども、全体を通して説明だらけになっているのはバランスが悪いし、何よりスタイリッシュに魅せるバトルパートまで雁字搦めになっているのはどうだろう。

 

軽く読めるのが最高だとは言わないが、本作は読み飛ばすような余裕がない。描かれるバトルは単語の意味を理解して、更に想像しなければいけないので、折角のボス戦が盛り上がりきれないよう映る。命を懸けたギリギリの勝負しているという切迫した空気が説明されるし、状況的にもそうなのだけれど、これがいまいち読み手までは伝わってこない。主人公たちは熱く頑張っているけれど、読み手は熱狂しきれない。

 

キャラクターの配置と展開のさせかた、王道だが故に可愛らしいヒルダ。

 

さて、ここまでネガティブに感想を書いたけれど、魔術師、パートナー契約、星座名を関した12組織の派閥争い、貴族と平民、己の才覚を伸ばした独自魔法、国々の権力争い――など世界観や設定は凄く面白いのは確かであるし、ライトノベルらしさがある。どこか見たことある設定もラノベらしさであるし、邪推させない程度に本作のものにしているのは素晴らしい。

 

人工知能が感情を持ったら、主従関係から生まれる感情は恋愛たるか。狼犬姿のときから乙女な思考と言動をとっているヒルダちゃんですが、少女姿の可愛らしさったらない。一途に一心に一将を想うヒルダちゃんの構図がそのまま作品の強みになっていたりする。

 

突っかかるところはあるのだけれど、最後は面白かったという結論に至る。説明が嫌いではなければ、一度読んでみる価値はある。本作は名作になり得るポテンシャルを持っていると思うのだ。

 

 Presented by Minai.

塔京ソウルウィザーズ (電撃文庫)

塔京ソウルウィザーズ (電撃文庫)