Infinity recollection

ライトノベルを中心に感想を載せているサイト。リンク+アンリンクフリー。

妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫) [感想]

妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)

 

 

ある日青年は自分の恋が妄想だったことを知る。

 

大学一年生の春、新しい環境での大学デビューを果たそうと意気込む主人公だったけれど、憧れの人が妄想だと気付いたときに、彼の大学生活は早々に終わった――。そして二年生の秋、彼の目の前にジョナさんと名のる美少女(妄想)があわられ、彼に友達を作るために、妄想脱出計画をスタートさせる。

 

途中までジョナさんが妄想の産物なのか現実に実在する美少女なのか、主人公の妄想のどこまでが妄想なのかとか、砂吹が嘘をついている可能性なども考えてしまって、どうにも判断がつかなくなるので、読み手が主人公と同じく混乱する構図が面白かった。

 

結果、ジョナさんは妄想だというのは疑いようがなくなるのだけれど、そうなってくると、今度は主人公の置かれている状況だとか、ジョナさんと話しているのは独り言を喋っているだけに周囲には映るのだよな、だとか考え出すことになる。

 

ジョナさんは素直じゃなく、わがままにちょっと拗ねた口調で主人公に妄想脱出のストレートな作戦を授けてくれるのだけれど、これも自らの妄想なのだから、ジョナさんの思考は彼の思考で、彼の願望で思いを色濃く反映しているはずなのですよね。

 

もちろん、美少女だという妄想も彼が作り出したもので、そんな彼女に恋をしてしまう流れも当然なのかなと。とにかく人生に悩んで、恋に悩んで、青春に悩んで、生き方に悩んでいる姿がとても印象的で。けれども、妄想から現実に戻るという確固たる意思をもって行動する姿は根性が座っている。

 

事実、少しづつ主人公が変わっていくことが読んでいて分かるので、最後の締めの部分にしたって切ない雰囲気が溢れて、余韻を残して読み終わらせるところが美しい。綺麗にまとまっている一冊です。

 

  Presented by Minai.

妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)

妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)