Infinity recollection

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WORLD END ECONOMiCA (2) (電撃文庫) [感想]

WORLD END ECONOMiCA (2) (電撃文庫)

 

ハルがどのように立ち直ったのか、そもそもどうやって話を続けてどこに着地しようとさせるのか気になっていたわけですが、二十歳になったハルは確かに成長していましたし、後悔や失敗から逃げずに立ち向かえる強さを得たように思います。それは一人で孤独に戦い続けていた戦えると思っていたハルが、仲間の力を借りても良いことに気づいたということであり、仲間を頼るということに対して本当の意味で信じることが出来たから、信頼出来たからなのかもしれません。

作中では投資銀行や証券会社の不正や不誠実な行いに対して真っ向から立ち向かおうとする姿が描かれていたのですが、大企業が仕掛ける一種イカサマのような立ち居振る舞いには大掛かりで大仰ではあるにしても、納得せざるを得ないところがありまして何とも暗澹たる気持ちにさせられます。つい最近も現実にIPO関連で酷い案件があったばかりでしたね。仮にも名立たる証券会社が息巻いて主幹事として取り計らったにも関わらず、公開したモバイルオンラインゲーム会社の株は見る見る下落してIPO詐欺と叫びたくなる有様に見えました。証券会社は公開価格から結構な手数料を貰えているはずですし、企業側にしても公開後に株式を売却していれば相応の利益は得られたでしょうけれど、泣きを見のは株式を購入した投資家や投資屋だけでしょうか。作中で語られる、騙されるのは顧客だけというのは確信に迫っている気がしますし、続いて顧客は自分を騙すという文言には返す言葉が見つかりませんでした。

 

今回、クリスがプラス13%の利益を上げた後にマイナス18%の損益を負うことになるのですが、それに対してハルが放つマイナス273度の世界を見てきたから掠り傷だという言葉はとても重みがありました。顔は青ざめ胸が締め付けられて血流が凍る。恐らく損益をマイナスの数字を見た人は誰もが感じることになるその表現。数字が大きい小さいは関係がないのです。大きければ卒倒しそうにもなるでしょうが、小さくても現実逃避はしたくなる。新キャラクターであるエレノアが加わりハガナを失って4年が経過した今、ハルは太陽王を打倒するべく己の剣を抜き放ったわけですが、そこで太陽王にも家族がいたことに気づいてしまう。このまま切り伏せるべきなのか、そもそも切り伏せられるのか、逆に太陽王の侵略を許容することになるのか。はたまた、一緒に宮殿でも拵えるのか。そんなわけで中巻でした。クライマックスがどうなるのか楽しみです。

 

WORLD END ECONOMiCA (2) (電撃文庫)