月光 (電撃文庫) [感想]
第16回電撃大賞 最終選考作
日々に退屈しながら毎日を過ごしていた野々宮は、ある日、完璧ゆえにゴシップが絶えないクラスのアイドル、月森葉子のノートを拾う。謎多き彼女のノートからはみ出した紙には、殺しのレシピという文字が書かれていて。
ミステリーやサスペンスを想像させつつ、ラブコメ。
真にそれで、自分は期待通りだった。始めからその方向性だと知っていたわけではないが、読んでいくうちにそうなら綺麗だなと。
野々宮はノートを拾ってからしばらく経ったある日、月森葉子の父親が交通事故で亡くなったことを知る。クラスメイトたちは月森に同情的に接するのだけれど、野々宮にはそれが出来ない。
何故なら、その死に方は殺しのレシピに書かれていたものと類似していたからだ。これによって野々宮は彼女が父親を殺したのではないかと疑う。彼はこれで退屈した日常から抜け出せると興奮する。
ここで月森が野々宮に近付いてくるからハラハラだ。
彼女は野々宮が好きだと言って近付いてくるのだけれど、それが何とも、殺しのレシピを貴方が持っていることを知っているわよ、と無言の圧力がある。裏がありそうだと印象付けられる。
そんな騙し騙されの関係が面白かった。
二人の会話を読んでいるだけでも確かに楽しめるのだけれど、最たるものは、静かに恋に落ちていく過程を描いていること。二人の距離感の調節が上手いので退屈しない。ミステリー、サスペンス、のようでラブコメ。このラブコメのしっとり感は素晴しかった。
刑事の件はもう少しやりようがあったのではないかとか、千鶴をもう少し動かしてくれれば新しい面白さもあったのでは、など残念さはあるのだけれど、楽しませてもらった。
面白かった。
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- 作者: 間宮夏生,白味噌
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2010/09/10
- メディア: 文庫
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