星界の断章 1 (ハヤカワ文庫JA) [感想]
アーヴの誕生と罪、その起源に迫るような短編集。
星界シリーズを読む上で、今まであまり語られていなかったアーヴという存在についてが書かれているので、作品に深みが出ている。アブリアルの話など興味深い。
作中には、過去編とでもいうべきこれらの話に加えて、16歳を迎えたばかりのレトパーニュひいてはスポール家の話、サムソンの食へのこだわりなど、ジントとラフィールの周りにいる人の物語が収録されている。
16歳のレトパーニュは今と変わらず、スポール家らしさを持っていて、その母親もやはりスポール。その仕事ぶりや台詞の言い回しなど、納得です。サムソンにしても、食に対しての姿勢に納得。あれでは真剣にならざるを得ない。
ジントとラフィールの話がないわけではないし、あるのだけれど、それはショートショートの様に章と章の間をつなぐ短いもの。加えて、ifストーリー的な位置づけの話だ。
その自由度の高さが良かった。
作品の大部分にジントやラフィールが登場しないし、基本的に小難しい物語が続いていくのだけれど、適度に息抜きが出来て読みやすく調整されている。
例えば、祭りが行なわれるというからジントが参加するのだけれど、その祭りは本を売り買い、展示するような祭りで、同人なんて言葉も登場して。そして何故かラフィールがそこにいる。
ジントに見つかったラフィールは酷く慌てて、自分が購入したと思われる品物を身体の後ろに隠してけして見せようとはしない。けれども、そこにいるジントとラフィールは星界のままで、そのギャップが何か違うSFを読んでいる気にさせてくれるのが新鮮だった。
面白かった。
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- 作者: 森岡浩之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/07/08
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