時間のおとしもの (メディアワークス文庫) [感想]
短編集。
タイムスリップや平行世界理論など、時間やSFに関する短編を詰め込んでいる一冊。どの短編にしても著者も持ち味を全開にしたものばかり、独白の言葉選びからキャラクターが”らしさ”を帯びているけれど、最後に叙述トリックを持ってくる辺りは著者だなと。
「携帯電波」は読み終わったときに背中を這い上がってくるようなうすら怖さが良い。突如かかってきた電話の相手は自分自身で、その後電話が切れると電話相手の世界に移動してしまうというもの。
母子家庭で育ちで、母親のことはたまに嫌いになるけれど大好きだというのが短い描写の中で伝わってくるので、とにかく元の世界に戻りたいと願う幼い主人公の姿が印象的。焦れば焦るほど泥沼に足が埋まっていくようで、読み手まで焦る。
「ベストオーダー」は物語がもっているワクワク感が半端ではなかった。四人になってしまった主人公がどうなってしまうのか。楽しい話かと思いきや、途中から雲行きが怪しくなり、誰が誰だか一瞬分からなくなるし、本物か嘘をついている展開も想像して、楽しいですし退屈しない。
「未来を待った男」は美しかった。見事にやられたというのと、明るい話で終わってくれたのは気持ちが良いですね。タイムマシンという素敵ギミックを組み込んでくれたのも好きなところ。是非、読んでやられた感を味わって欲しい。
面白かった。思わぬクロスオーバーも他作品を読んでいる人には嬉しい要素かも。
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- 作者: 入間人間
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2012/01/25
- メディア: 文庫
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