魔法科高校の劣等生〈4〉九校戦編〈下〉 (電撃文庫) [感想]
九校戦編。
新人戦が始まって、一年生が輝くときが来ましたが、そんな中で一際異質だったのはやはり達也だろう。エンジニアとしてCADの調整をする裏方に回りながら、ここまで注目を集めるとは。達也が組み込む革新的な術式の数々に毎回のように驚かされる先輩やら同級生やら他校の生徒。
――無双。
九校戦を見ても、圧倒的な強さで一高が抜け出していっていました。また、予告でもあったように補欠で出場したモノリスでの活躍は大丈夫なのかと問いかけたくなるくらい。随所に散りばめられる魔法の説明も、世界観と合わせて興味深く、楽しみながら読めた。逆に、この辺りは説明が苦手な人にはオススメできない、ということにもなるのだが……。
新たな登場人物たち。
一条くん……、いやもっと期待していたのだけれども、あっさりと達也にやられてしまいました。実戦なら一条も力を発揮できたのかもしれないが、その実戦でも達也の底知れない強さがあって、どうにも勝利を想像出来ませんね。
個人的に達也は冷淡に思えてしまって、物語の案内役としては優秀ですが、感情移入が出来ない。もちろん魔法の強さや、不動の冷静沈着さに格好良さを感じるのですが、好きにはなれないキャラクターでもあるのです。そんな中、人間らしさのある一条は好感が持てたので、達也と拮抗した強さを期待してしまいました。いや、予想以上に達也はバケモノ級の強さみたいです。
もう少し達也を苦戦させる人物が登場してくれば更に面白いのだけれど……。
そんな中、一番人間らしく、高校生らしかったのは幹比古でしょうか。常識人というに一番近いのが彼だと思います。高校生らしく自らの才能に悩んでいますし、挫折も味わっていて、背景には暗いものを背負っているがそれを周囲には見せない。作中で驚いたり呆れたりするポイントが、読み手に合わせてあるキャラクターでもあって立ち位置に邪魔な要素がない。
幼馴染との微妙な距離感の中、交わす台詞が響く。
おのずと幹比古に興味が沸いてきますし、さりげなく彼にスポット当てていくのは上手かった。達也たちの活躍から見れば小さな場面でしかないのだけれど、強烈に印象に残った。幹比古は作品の中で一番好きなキャラクターかもしれません。
面白かった。次回は短編集とのことだけれど、今から楽しみです。
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- 作者: 佐島勤,石田可奈
- 発売日: 2011
- メディア: 文庫
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