Infinity recollection

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ガーリー・エアフォース (2) (電撃文庫) [感想]

ガーリー・エアフォース (2) (電撃文庫)

 

F4ファントムのキャラクターいいですね。精神年齢も高めでお嬢様っぽいクールキャラ。極度の現実主義者というか、少しでも長く人類を生き延びさせる為に戦っているので、現状とこれからを天秤にかけてより人類のためとなる方法を選択してしまうが故に冷酷に見えるときもありますが、要するに不器用でとことん真面目でプライドと信念を持っているキャラクターです。緑髪でおかっぱ頭というビジュアルも好きだったりします(緑は好き嫌い別れますね)。彼女はベテランということもありますし、てっきり部隊編成では隊長機にでも抜擢されるのかと思いきや、話は別な方向に進んでいきましたから慧の心労を慮ってしまいますね。だからこそ意外だったのですが慧が訓練や筋力トレーニングで戦闘機を操縦できるようになるとは思わなかった。レーダー要因になるものだと思っていたものですから「あれ? 案外戦えちゃってるな」と、確かに戦闘機乗りの方が格好良いですし読んでいて楽しい。というか、それが出来ちゃうのであれば慧の言う通り、アニマと人間の関係性は変わっていくのかもしれませんし、慧とグリペンの特殊性が際立ってもいますから今後はその辺りに軸足を移して物語を展開していってくれるのでしょうかね。楽しみです。

 

 

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫) [感想]

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

 

またとんでもないモンスター作品を生み出してしまいましたね。やはり平坂読先生は天才に違いない。「ねくろま。」ではヒロインが常にハダカという画期的なアイデアからホラー系ヒロインを読ませてくれましたし、「僕は友達が少ない」は言わずと知れた残念系ヒロインを読ませてくれました。レーベルが変わってもヒロインをようしゃなく明るく脱がしに積極的に全裸するのは変わらないのですね。逆に安心しちゃうから不思議。今回はさしずめ、ぶっ飛んだ系ヒロインやもっと直接的に変態系ヒロインと言ったところでしょうか。妹キャラとのラブコメ作品なのかと思ったら、妹キャラが大好きなライトノベル作家が主人公のお話でした。しかも割りと下品というか、主人公の思考回路がそもそもぶっ飛んでいて妹に対する愛が重すぎること重過ぎること。作中作の主人公が執筆したラノベには妹キャラが毎回登場するのだけれど、文章におこされたときの破壊力たるや、とてもじゃないが公共の場では読んではいけない。これは一人部屋に篭って静かに読むべき作品でした。作家業の大変さや面白さや夢やらとレトロ・アナログゲームとビールを詰め込んで、キャラクター重視エンターテインメント重視でエロくしたらこんな作品に仕上がるのかもしれませんね。仮にもライトノベル初心者にはオススメできそうもない作風に仕上げてくる読先生は紛れもなく漢ですし、「僕は友達が少ない」が好きだからって継続で作者買いしてくれた人たちをばったばったと切り伏せていく画まで見えました。この作品を読んでいたら「……どうしたの?何か悩みとかあるの?」って心配されるまである。

 

ライトノベル作家の生態をあることなのか、ないことなのかは分かりませんが描いているわけですが、あとがきで渡航先生が兼業作家と専業作家の違いに言及しているのは面白かったです。基本的に話はコミカルに進みますが、ふとした瞬間にそういった業界あるある的な側面をシリアスに語っていて興味深い。才能の有無で天才系作家と職業系作家に分類される云々で作家の劣等感や葛藤や羨望といった生々しい感情を描いたり、登場人物たちが学生だから青春活劇に見えるけれど書いてあることはキツめですし、ちゃんと心が痛い現実感がある。ぶっ飛んだキャラクターを配置して変態的な台詞を言わせているのに、作品としての描きたいところがここだよというのをしっかり見せてくれるのは平坂読先生だなと。また、某有名ライトノベルランキングを派手に袈裟切りしていたり、ラノベを語ることに対して縦断爆撃してみたり、出版業界に警鐘を鳴らすどころかぶっ壊しにかかる読ちゃん節には脱帽。レーベルが変わっても己を貫くスタイルに惚れますね。

 

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

 

 

WORLD END ECONOMiCA (2) (電撃文庫) [感想]

WORLD END ECONOMiCA (2) (電撃文庫)

 

ハルがどのように立ち直ったのか、そもそもどうやって話を続けてどこに着地しようとさせるのか気になっていたわけですが、二十歳になったハルは確かに成長していましたし、後悔や失敗から逃げずに立ち向かえる強さを得たように思います。それは一人で孤独に戦い続けていた戦えると思っていたハルが、仲間の力を借りても良いことに気づいたということであり、仲間を頼るということに対して本当の意味で信じることが出来たから、信頼出来たからなのかもしれません。

作中では投資銀行や証券会社の不正や不誠実な行いに対して真っ向から立ち向かおうとする姿が描かれていたのですが、大企業が仕掛ける一種イカサマのような立ち居振る舞いには大掛かりで大仰ではあるにしても、納得せざるを得ないところがありまして何とも暗澹たる気持ちにさせられます。つい最近も現実にIPO関連で酷い案件があったばかりでしたね。仮にも名立たる証券会社が息巻いて主幹事として取り計らったにも関わらず、公開したモバイルオンラインゲーム会社の株は見る見る下落してIPO詐欺と叫びたくなる有様に見えました。証券会社は公開価格から結構な手数料を貰えているはずですし、企業側にしても公開後に株式を売却していれば相応の利益は得られたでしょうけれど、泣きを見のは株式を購入した投資家や投資屋だけでしょうか。作中で語られる、騙されるのは顧客だけというのは確信に迫っている気がしますし、続いて顧客は自分を騙すという文言には返す言葉が見つかりませんでした。

 

今回、クリスがプラス13%の利益を上げた後にマイナス18%の損益を負うことになるのですが、それに対してハルが放つマイナス273度の世界を見てきたから掠り傷だという言葉はとても重みがありました。顔は青ざめ胸が締め付けられて血流が凍る。恐らく損益をマイナスの数字を見た人は誰もが感じることになるその表現。数字が大きい小さいは関係がないのです。大きければ卒倒しそうにもなるでしょうが、小さくても現実逃避はしたくなる。新キャラクターであるエレノアが加わりハガナを失って4年が経過した今、ハルは太陽王を打倒するべく己の剣を抜き放ったわけですが、そこで太陽王にも家族がいたことに気づいてしまう。このまま切り伏せるべきなのか、そもそも切り伏せられるのか、逆に太陽王の侵略を許容することになるのか。はたまた、一緒に宮殿でも拵えるのか。そんなわけで中巻でした。クライマックスがどうなるのか楽しみです。

 

WORLD END ECONOMiCA (2) (電撃文庫)
 

 

神のゴミ箱 (メディアワークス文庫) [感想]

神のゴミ箱 (メディアワークス文庫)

 

夏って怖い。夏休みって怖い。学生の夏休みって怖い。大学生の夏休みなんて最上級に怖い。羨ましいほどに何もしない。ちょっと不思議が起こるけれど基本何もしない。何でこんなに何もしていないのにキラキラ輝いて見えるのか。ただただ、青春という日々を過ごしていく、正確には青春の残りを惰性していくことが楽しそうなのか。主人公は主人公という例に漏れず本当に良い奴でお人好しなので、そこまで付き合わなくても良いであろうアパートの住人たちに首を突っ込む突っ込む。驚きなのは、本作の始まりから顔見知りではあったものの一年間ほど「顔見知り」という期間であったにも関わらず深く関わっていけるところだろうか。問題を明確に解決するというわけではないのだけれど、主人公が行動することで言葉を交わすことでアパートの隣人たちの悩みや葛藤が和らいだり、少しだけ先が見通せるようになっていた気がした。その風景がコミカルに描かれていくものだから、何だかそこに住みたくなってしまう。作品の中に溢れている雰囲気がともて暖かくて柔らかいのですよね。シリアスはあるのだけれど日常でコミカルさをしっかり描いてくれますし、失恋から生まれ変わった主人公が神の名前に相応しく寛容だからなのかな、全てが優しく包まれていく感覚になる。

 

アニメでも舞台でもいいのだけれど、視覚化したら面白そうな作品ですよね。登場人物が暴力的で可笑しく可愛らしい所謂ところの個性的であることは作品の型として標準装備なのだけれど、読んでいて映像のカット割りを想起させられるほどに地の文と台詞が上手い具合に回っていくので、読んでいて飽きないのですよね。台詞ではこう言っていて地の文の説明はないけれど、キャラクターの行動はこうだよねだとか。主人公の独白から比内の突飛な行動が描写されることで、素早くカメラが切り替わるが如く映像を想像させる。アニメ化しないかな。難しいかな。難しいだろうね。シャフトさんみたいなコマ割りを想像しながら読んでいたのですがね。

 

本作は誰かが捨てたゴミから始まった物語なのだけれど、たまたま神が拾ったことで繋がっていく。誰かが諦めて捨てたものは、もしかしたら何かの切欠になるのかもしれない。それは自分かもしれないし他人かもしれない。ゴミ箱がどうして他人のゴミを転送してくるのかは分からないけれど、そんな悩みこそゴミ箱に捨ててしまえばいいのかもしれません。続き楽しみです。

 

 

俺の教室にハルヒはいない (4) (角川スニーカー文庫) [感想]

俺の教室にハルヒはいない (4) (角川スニーカー文庫)

 

胃がキリキリと痛むような冷や汗かかされる恋愛模様には、胸を締め付けるどころか首を絞めてきて酸欠にされられたような錯覚を起こさせるこの物語。4巻にて完結なのですね。凄く残念ですし悲しいです。最近では珍しく、刊行されるのを心待ちにしていた作品の一つでしたのでまさか最終巻とは。7巻8巻辺りで完結だと思っていただけに、もっと話を読んでいたかったというのが正直なところ。売り上げ的な意味で打ち切りってことなんですかね。。。(本作ですらとなると、今後のライトノベルに憂い悲観してしまいますね)

 

ユウのやる気の無さも含めてどこか達観している部分や人に対して期待していないところなど、高校生離れして大人びているその様子にはどこかで理由が開示されるのだろうとは思っていました。それはシリーズ終盤になるのだろうなと。今回それを見透かしたように綺麗にユウという高校生の理由を入れ込んできてくれていて嬉しい反面、本当に終わるのだなと感慨深い気持ちになってしまいました。本作は同じくスニーカー文庫刊行の「サクラダリセット」と同種の雰囲気をまとった作品だなと1巻刊行時から感じていましたから、丁寧に丁寧に展開したら本当に面白い作品になるに違いないと。それこそ、作品の本質を描ききったときに真価を発揮する作品なのだと周りに言った記憶があります。それでも、4巻で完結ということで全てを詰め込んでいるのに破綻させずに物語を描ききった作者はやはり素晴らしいですし、上手かったですね。

 

俺の教室にハルヒはいない」1巻の感想で、ユウは普通の人間ではあるが普通ではないと書いた。彼には人の為に行動できるということだったり、相手を否定せずに肯定できる強さがあるのだと。けれど、ユウが拒否し続けてきた学園モノ作品には、それを遥かに凌駕するような、人が頑張れる範囲を大きく逸脱した力を持った登場人物たちが現れるわけで。否応なしに自分はユウ自身は普通なのだと気づかされる。ユウの人格形成に至った家族などを踏まえながら、ユウの歪で危うい価値観に触れ、始めからあった設定たちを綺麗に収束させていく手腕は美しいの一言でした。「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」俺の教室にハルヒはいない。そう涼宮ハルヒはいないのだ。いるのはただの人間だけなのだ。ハルヒは特別な力を持っているかもしれないが、ハルヒからすれば自分も含めてただの人間。だから、いつも退屈で憂鬱なのだ。けれども、誰かからすれば特別な人間かもしれない。それこそ朝比奈さんや長門な古泉にとってハルヒが特別なようにキョンにとってもハルヒは特別だろう。だったらユウだって誰かにとっては特別かもしれない。普通の人間かもしれないけれど、特別な人で大切な人、なのですよね。そんな一連の流れから「涼宮ハルヒの憂鬱」を初めて読んだ2004年を思い出させてくれた。

 

恋愛方面については賛否両論でしょうけれど、自分はこれでいいのではないかなと思います。誰かを選ぶとしたら個人的にはマナミさんを推しますが、カスガのいつまでも変わらない距離感には和まされましたし、神楽坂先輩も芯が強いなと。幸せになって欲しいから、誰もいないなら私でもいいかなって思うカスガの思考や、アスカさんがマナミさんであることを否定しちゃうだとか、キャラクター面では著者の持ち味で通しきっていて満足でした。

 

俺の教室にハルヒはいない (4) (角川スニーカー文庫)

俺の教室にハルヒはいない (4) (角川スニーカー文庫)